・無視はしないこと
もし、あなたに意見照会書が届いた場合、どのように対応するのがよいのでしょうか。
怖くなって(あるいは詐欺による請求か?と疑ったりして)無視したくなる気持ちも分かりますが、それはしないほうがよいです。
・開示に同意したほうがよい場合が多い
もし、あなたが該当する「作品」を(トレントを使用して)ダウンロードしたことがあった場合、私は、情報開示するか否か、の質問に対して、同意するべきと考えています。
なぜなら、
①あなたが不同意(拒否)をしても、最終的には裁判で開示される可能性が非常に高いこと、②また、同意することによって、少なくとも今は反省している姿勢を示すことができるからです。
・開示を拒否した場合はどうなるか
もし、あなたが絶対にダウンロードはしていない、と断言できる場合はどうでしょうか。
その場合も当然訴訟になるわけですが、その場合、あなたは自分ではないという証拠を示さないといけません。
ただ、この点が非常に厄介な点なのですが、著作権者は証拠があるからこそ開示請求をして、加えて訴訟をしてくるわけです。
著作権者は、ダウンロードした時刻やそのIPアドレスを把握しています。そのうえで、IPアドレスが割り当てられているPC(あるいは居宅等)があなたのものだとわかって訴訟を提起し、証拠を提出してきます。
それに対して、当該IPアドレスが偽装されたものという主張を検討することもありうるでしょう(実際VPN等によって、偽装され、それがたまたまあなたのPCに割り当てられたものというケースも、非常にレアケースですが、ありえます)。
ただ、かなり稀であるうえに、通常はIPアドレスが割り当てられていれば、そのPCによるダウンロード(アップロード)であることがほとんどなので、かなり苦しい立場になります。
したがって、最初の段階で意見照会に対して同意して、反省していることを示し、示談金(和解金)の額を減らす交渉をするほうが、最終的な出費が小さくなることも少なくありません。
このあたりが非常に難しいところなのですが、徹底的に争えば争うほど、(弁護士費用を含めた)訴訟費用がかさんでしまう、にもかかわらず、仮に勝てたとして、その出費を回収することはかなり厳しい、という現実があります。
・拒否した場合は訴訟になる可能性が高い
あなたが、意見照会に対して拒否した場合、それを踏まえてプロバイダは情報開示をするかどうか判断します。
契約者が情報開示を拒否した場合には、原則として、プロバイダは請求者に情報開示はしません。
(ただ、著作権の侵害が明白である場合、「権利の侵害が明白」だとして、任意に開示することが、いわゆる「誹謗中傷」事件と比べると多い印象です。)
ともあれ、プロバイダが情報開示をしなかった場合には、著作権者は発信者情報開示訴訟をプロバイダに対して起こします。
訴訟になった場合ですが、これも誹謗中傷の事件とは異なり、著作権侵害は分かりやすく判断できるため、多くのケースで発信者情報は開示されます。
・発信者(あなた)への損害賠償請求
発信者情報開示請求を経て権利侵害者(あなた)の氏名や住所を特定すると、著作権者は、
「あなたに対して」損害賠償請求をすることになります。
ここで気になるのは、果たして請求者(著作権者)の損害賠償の請求額がいくらになるのか?
という点だと思います。
理屈でいえば、損害賠償請求の内容は、
主として著作権侵害をしたことによって失われた利益(本来得られたはずの利益)になります。
他にも調査費用や弁護士費用も請求されます。
著作権侵害によって失われた利益については、(これも誹謗中傷等とは違い)、著作権法第114条に計算方法があります(ただ、必ずその金額になるわけではありません)
著作権法第114条1項に推定規定があります。この計算方法についても、トレントによる著作権侵害についてどのように当てはめるか、はいろいろと考え方があります。
ある裁判例によれば、侵害者がトレントを使用していた期間のダウンロード回数×販売利益という計算式による、としています。
これが高額になるかどうかは、ケースバイケースなのですが、高額になってしまうリスクがあることは念頭に置いておいたほうがいいでしょう。
次回は、
そのような高額になりうる損害賠償額の請求をされた場合、どう対応することが望ましいと、私が考えているかをお話します。